「銭湯お遍路88浴場」達成を終えて

認定証が届きました。東京の銭湯88箇所満願成就。コロナ渦でもあったのですが、途中からサウナーになってしまい、サウナと水風呂のスペックにこだわってしまい7年もかかってしまいました。電車で巡って快楽ばかりで全く自慢できることではなく、子供のようにスタンプラリーをしただけです。でも、意外に達成感がありました。

きっかけは、庶民文化研究家の町田忍氏と中目黒で飲んだ時。銭湯の魅力を滔々と話されて心の隅に染み付いた。そして時は流れて10年後ぐらいか、シンガー・ソングライターの武藤昭平氏に銭湯お遍路のスタンプシートが置いてある銭湯を教えてもらった。で、すぐにその銭湯に行ったらない。がっくり。でも、番台の旦那にその話をすると、そう言えばそんなのがあったなあと奥から持って来てくれた。品川の恵比寿湯(すでに廃業)。一個目のスタンプをゲット。これがスタートです。

古い銭湯の宮造りはお寺に似ていて、まさにお遍路です。でも本物の四国のお遍路は大変でしょうね。銭湯お遍路は、電車に乗って気持ちいいお湯に浸かって快楽だけの世界です。しかも、毎回熟睡でき、朝には見事に適正体温にピッタリで現世ご利益があるのです。

ネットで銭湯を調べて、実際に電車を乗り継ぎ行ってみる。交通費の方が高いので、本当は自転車で行くのが筋だと思いますが、ビールのために行っているのもありますので。

一生行くことがなかった街の臭いを感じ、住宅街を迷い、外観、ペンキ絵やお湯、女将の人柄。色んなものを愛でます。

時には、不愉快な思いをしたり、怖い人や変な人にも出会います。のぼせて倒れた人を救護する場面にも出会いました。

東京の88箇所の銭湯を巡って結局、都内で一番好きな銭湯はどこか。

銭湯を語るなら、キングオブ銭湯と言われる北千住の大黒湯に絶対に行かなくてはならない。しかし、なんということか昨年廃業。

調べてみると前年の時点で花の東京にはたった481湯しかない。コロナに続きこの燃料費の高騰下、日々廃業している。

そもそも今時、銭湯に行くのは定期券を持っているのに、間違ってきっぷを買ってしまうような愚かな行為なのかもしれない。でも今では、お風呂のある人にとっては、非日常の世界なんです。銭湯は。贅沢といってもいいのかもしれません。日々の生活に疲れた時、日常と違う世界を覗くのも脳と身体に価値ある行為ではないでしょうか。しかもワンコインです。

自宅にいくら立派なお風呂があったとしても、しれています。銭湯のお湯は熱量が違います。自分だけの体温ではそう簡単に温度は下がりません。先程も書きましたが、のぼせてしまうほどのパワーがあります。

真夏の銭湯からの帰り道、あのクソ暑かった感覚はありません。逆に涼しさを感じます。この心地良さはなんなんでしょう?

で、一番良かった銭湯はどこ?

何でも、一番は簡単に決められない。それぞれ銭湯は最高なところもあるし、欠けているところもある。

あえて書くと・・・

銭湯ファンでなくても万人にオススメできるのは、鶯谷の「萩の湯」。ここは鉄板かも。タオル類やサウナがすごくリーズナブルだし、普通の2倍の広さで、様々なお湯がある。そして、食堂で赤身のステーキと生ビールを飲むのが最高。一番儲かっている銭湯だと確信している。スーパー銭湯よりまずは「萩の湯」。近くに子規庵もあって、ボランティアさんが解説してくれる。

個人的に応援したいのは、大田区の「益の湯」。サウナが無料だし、源泉かけ流しの黒湯がある。若夫婦の感じ良さも最高。生ビールもある。休憩所で休んでいる人が多いのは、心地いい証拠。

もう一つ、大黒湯なきあとはキングオブ縁側の同じく北千住の「タカラ湯」。ここは、駅から20分ほど離れた荒川の近くなんだけど、蚊取り線香の香りの中、磨き上げられた木の縁側でスイカを食べてみたい。

サウナがいいのは・・・

サウナ単体で最高なのは、東中野の「松本湯」。リニューアルされてきれいだし、ここのサウナは灯りがなく暗い。フィンランド風なのか。ロウリュウの頻度が高く、横浜スカイスパ並の高湿度。しかも広い。昇天しそうな不感湯もある。そして、少し残念なのがスペースの問題だろうけど深い水風呂。身体を冷やす目的は達成できるが、リラックスできないかも。これも仕方ないけど外気浴スペースがない、でも、冷風の涼み処がお風呂内にある。しかし混んでいるのでまず使えない。

サウナ、外気浴が最高なのは、西新井の「堀田湯」。ここのサウナのロウリュウの爆発的熱さは、半端ない。サウナ北欧より熱い。この熱さを求めてリピーターが増えると思われる。外気浴スペースはここが銭湯なのかと思うぐらい、広くて静か。この静けさが結構重要。
ただ、スペースがあるにも関わらず、どういうわけか深すぎる水風呂。自分の身長では溺れてしまうからリラックスできない。まあ、階段の途中で人の迷惑顧みなければ、ゆったりすることはできる。

いつも最高にととのうのは、錦糸町は「小金湯」。何十回通ったことか。ここのせいでスタンプが進まなくなった。サウナ、水風呂とも最高。外気浴スペースも椅子が10脚ある。ただ、機械音がうるさい。水曜日には男女が入れ替わる。サウナは3名ほどしか入れないが、自分でロウリュできる。水風呂は20度とヌルいが長時間かき回しながら入ると、とんでもなくととのったことがある。音楽はアナログレコードで80年代の和製ポップス中心。

唯一惜しいのは、三ノ輪の「改栄湯」。改装されたばかりで、ラグジュアリーホテル並みの高級感。自分の一番好きなデザイン。そして露天にサウナと水風呂と温かいお風呂がある。でも、サウナがカラッカラ。三ノ輪らしくストーブの上にアルマイトの鍋が置いてあるけど、全く蒸気は足りない。オートロウリュが付けばここを最高認定する予定。都内で一番高級感を味わえる銭湯。

では、銭湯に一回しか行けないとしたら・・・

五反田からちょっと歩く、「松の湯」かも。古い古い銭湯なんだけど、清潔に保たれていたので、ものすごくリラックスした気分になった。夏だったので、開放された窓から蝉の声が聞こえて、子供の頃のクワガタ捕りを鮮明に思い出した。これが最高に贅沢な時間ではないかと思う。

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